維音さんと服の話
維音(いと)さん(ソトス症候群、急性脳症後遺症、10才女子)のお母さまに、維音さんの服の工夫・悩み・おすすめ・こだわりについて聞きました。
質問:あなたの基本情報を教えてください
身長は約140cm、普段の着用サイズはトップス・ボトムスともにキッズ150〜160cmもしくはレディースXS〜Sです。
ソトス症候群中途発症、急性脳症後遺症、身体・1種1級、知的・最重度、寝たきり、車椅子利用で、基本的には四肢麻痺があり、自分で意識的に身体を動かす事が難しい為、生活全般が全介助です。
全身状態はソトス症候群由来の低緊張と急性脳症後遺症由来の強緊張が混在し、日によって状況が違う為その時その時に応じて対応を変えるようにしています。
着替えについては、全介助で寝かせた状態で行っています。低緊張が優位の時は2関節を支えるような形で腕や足を通すようにしています。突っ張りが酷い時は、そのまま着せるのではなくきちんと関節を曲げる方向に支援しながら着替えをするようにしています。そしてなるべく動作前に声掛けをして意識的に着替えている状況を理解してもらうようにしています。
質問:お気に入りのトップスアイテムと、その理由を教えてください
CIAOPANIC TYPY(チャオパニックティピー)のスウェットワンピースがお気に入りです。
スウェットワンピースは楽チンなのにオシャレに見えるので秋冬凄く活躍するアイテムです。ただ難点は…フード付きが多い。。という点でした。フードが付いているとどうしてもヘッドレストとの干渉があり姿勢が崩れやすくなります。
その為なかなか気に入る物に出会えなかったのですが、このワンピースはフードが無いのは勿論のこと、首周り・袖口・裾にレイヤードコーデに見えるようなポイントも付いており、とても気に入っています。
トップスは車椅子のベルトで隠れてしまう部分が多いので、首元や袖口等にアクセントが付いているだけで凄く顔周りが可愛くなるのでとっても嬉しいアイテムです!!!
裏起毛にもなっていて、冬場でも暖かい大活躍なワンピースです。
質問:お気に入りのトップスアイテムと、その理由を教えてください
ユニクロのブロックテックアウターが1年中使えるアイテムでお気に入りです。
春、秋は通常のアウターとして。梅雨時期は1番活躍してくれます。熱こもりがある子なのですが、抹消は冷えやすい…だから梅雨のジメッとした時でも何か羽織るものは必須で…この商品は風は取り込んでも、湿気を逃してくれるので、これなら着ていてもそこまで熱がこもらないで済みます。冬もダウン等の下に着せるようになったら、保温はされるけど着込みすぎて汗をかいてしまう等の悩みが無くなりました。
表面がツルツルしている素材なので、防水スプレーをかけてカッパ代わりにもなります。本当に1枚持っていると一年中重宝するアイテムです。
質問:お気に入りのボトムスアイテムと、その理由を教えてください
ユニクロのレギンスパンツがお気に入りです。
ユニクロのレギンスは素材が様々あるので、年中大活躍のアイテムです。日中は基本的に下肢装具を付けており、夏場は特に蒸れやすく肌が弱いため汗疹になりやすかったのですが、ショートパンツの下にレギンスをはかせる事で肌に直接触れなくなり、肌トラブルがなくなりました。
また生地も薄手なので装具と干渉する等の問題は特にありません。又、夏場は冷房対策にも効果的です。
冬場はワイドパンツ等の下にニット素材のレギンスをはかせる事で風を通しにくくなり、保温性も上がりどんなコーディネートでも楽しむ事が出来ます。素材だけでなく、色柄共に豊富なのでコーディネートのアクセントにもなります。
質問:お気に入りのボトムスアイテムと、その理由を教えてください
ユニクロのエアリズム素材のレギンスパンツがお気に入りです。
まず何より肌触りが良いです!!! オムツ+体幹装具なので、どうしても腰周りがもたついたり、蒸れたりするのですが…夏場でもサラッとしていて蒸れ知らずです。
また、ラインがとてもキレイなので、オムツをしていても凄くスッキリ見えます。それとストレッチも効いているので脱ぎ着がとてもしやすいです。自分で着衣出来る子にも凄くオススメです。
下の写真は、アテントSサイズのオムツを付けていてもあまり響かないというのが分かるように、お腹部分をアップにしたものです。
質問:お気に入りのインナーと、その理由を教えてください
ユニクロから先日発売された前あきロンパースがお気に入りです。
当初ロンパースはそこまで必要としていませんでしたが、物は試しに使用してみたらとても便利でした。抱っこした時にどうしても背中が出てしまったり、リハビリ時に介助歩行等を行うとお腹が出てしまったり…という事が無くなり、介助する側もとてもストレスフリーになりました。
質問:もう1つ、おすすめアイテムを教えてください
雨の日のお出かけってただでさえ大変なのに、バギーや車椅子だと更にそのハードル上がりますよね…我が家が雨の日に大活躍なのが、ディズニーランドで購入したポンチョです。
カッパや傘だと本人は守れても、バギーや車椅子はびしょ濡れになったりします。なかなか乾かないし…本当に大変。このポンチョは前ボタンでゆとりのある作りになっているので、我が家ではそれを普通に本人に着せるのではなく、前後ろを逆にしてバギーごとグルっと包むような形で使用しています。
本人の顔の前にフードがある感じです笑
バギーや車椅子のハンドル下あたりでボタンをパチンと留めたら車椅子だけでなく荷物も濡れずに済みます!!! 本人もすっぽり被れるので濡れません。
多少袖や裾の処理は必要になりますが、本人だけでなく、バギーや荷物までも守れるとっても便利なアイテムです。最近ディズニーランドで売っているもののデザイン変更により形式が変わってしまったようなのですが、多分普通に売ってるポンチョタイプのレインコートでも代用は可能だと思います。
アイテムの使い方1つで少しでもお出掛けが楽になるのは良いですよね!!!
質問:店舗で服を買物する際の工夫を教えてください
子供服がメインのお店は通路が狭く入り組んでいる事が多いので、基本的に車椅子で入店は難しい事が多いです。また、小さいお子さんが背の高いバギー型車椅子の死角に入りやすく危険です。
なので工夫とまではいきませんが、本人はお店の入口付近で家族と共に待っていてもらう事が多いです。
質問:通販で服を買物する際の工夫を教えてください
実店舗がある所では必ず足を運んで、そのブランドのサイズ感や生地のストレッチ感、洋服全体のライン等を確認した上でインターネット注文するようにしています。
サイズ的に大人のXS~Sでも対応可能なのでキッズサイズではなくレディースサイズをネットで購入する際は、サイズ表・口コミ等で、自分(母親)と同じような体型の方のレビューを参考にして娘のサイズに変換して購入するようにしています。
質問:服やファッションの情報をどのように収集していますか
ファッション情報はインスタ等のSNSや、ブランドアプリやファッション情報アプリ等を活用しています。また同じ障害児ママからのオススメも参考にしています。
質問:服に関することで、何か要望や願望はありますか
海外へ行った時に凄く衝撃的だった事がありました。それは、車椅子用の試着室が普通に試着室内にあったことです。試着室内は車椅子で入っても回転が可能な程の広さが確保されていて、何より驚いた事が大型ベットが設置されていたのです。勿論全ての店舗に設置されているわけではありませんが、大型のスーパー等に併設された衣料品店では何回か見かけました。
日本でも広い試着室が用意されているお店が増えてはきましたが、それはあくまでスペースがあるというだけで、実際車椅子ユーザーだったり身体に障害がある方が試着出来るかと言われたらなかなか難しいと思います。私も娘に試着はさせられません。
でも本当は障害がある方こそ洋服の着用感が大切(例:車椅子を自走する人が衣服と肌のスレでトラブルが起きる)で、だからこそ試着したいという方は多いと思います。日本でも海外のように、車椅子の方や身体に障害を抱えている方も安心して試着出来て買い物が出来るような、そんな社会に早くなったら良いな…と感じます。
また、これは私の凄く思い込みもあるんですが…私が洋服を手に取り娘の体に当てていると、なんとなく「…あ」という顔をされて同じ洋服を手にしていた方がそっと棚に戻される事があります。また、販売員さんにも基本遠巻きにされる事が多いので、いたたまれない気持ちになってお店を出てしまう事があって、地味に傷付きます(笑)
車椅子の販売員さんがいても良いんじゃないかな?と思ったりします。今は高齢化社会で老老介護が多い世の中です。私の祖父もそうでしたが、旦那様が奥様を介護なさっている場合、食事等はどうにかなってもやっぱり洋服はどうにも分からない分野(祖母が入院した際下着やパジャマ、洋服等何を用意したら良いか分からないと言っていました。)なので、例えばユニクロのように年齢層幅広いターゲットのお店に車椅子の販売員さんがいたら、そういう方の目線や悩みにも気付きやすくなって、優しい世の中になるように思います。
質問:最後に、読者の方にメッセージをお願いします
まだまだ世の中の障害者(児)のイメージは「汚い、怖い」が強いと思います。それはやっぱり着せやすい服や着やすい服というのが、ジャージやスウェットが多く、見た目が暗くなりがちな事も影響していると思います。
でも今は様々な選択肢がある世の中なので、障害者(児)だってオシャレを楽しんで良いと思っています。私自身、娘にはとびきり可愛い格好をさせてあげたいし、そこに制限は無いと考えています。
ただやっぱり普通の人のように、何でもかんでも簡単に着られるというわけではないのも現状です。だからこそリアルな声を上げることが大切さも感じています。
ファッションという面から障害に対しての世の中の認識が変ったり、身近に感じてもらえるようになったらとても嬉しい事だと思います。未来に生きる子供たちが少しでも幸せになる世の中になるように…親として今やれる事を精一杯やりたいと感じています。
おわりに
維音さん、維音さんのお母様、ありがとうございました!
記事の感想や維音さんのお母様に聞いてみたいことなど、どんなことでも構いませんのでお気軽に、ぜひ下のコメント欄に記入お願いします!
※名前はニックネームや無記入でも大丈夫です。また、メールアドレスやサイト名も無記入で大丈夫です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
コメント失礼致します。
この度、卒業論文で「特別な支援が必要な人の日常のファッションについて」という題材を論文にしようと思い、お記事を読ませて頂きました、障碍児保育専攻の大学生です。
貴重なお話しを拝見するさせて頂きすごく学びになりました。
お買い物で、どのように思うのか、必要な商品、支援は何か至極よくわかりました。
微量な力ではありますが、社会の価値観の変化につながるような論文を書きたいと思います。
維音さん、お母様がこれからも楽しくおしゃれに人生を楽しめる事お祈りしています。。
楽しくファッションを楽しめますように…!